べスメン規定、廃止せず修正せよ 

http://supportista.jp/2009/12/news16165138.html
 
 この記事に関してというか、ベストメンバー規定の是非について思うこと。

 この手の議論は、基本的に僕の中では解決済み。「必要、ただし修正すべき」ということ。世界各国のリーグでベストメンバー規定に準じる規定はあるし、誰も彼も起用すれば、誰かの期待を裏切り、集客に響き、スポンサーサイドの不利益になる可能性がある。
 
 根本的なこととして、何年も存在する規約にはそれなりのメリット・デメリットがあるはずで、両面から検討すべきなのが当然。しかし、この手の議論となると、「デメリットはこう、だから廃止」という論調が多い。確かにデメリットはあるが、それは何の規約でもそうだ。ゼロイチで語ることに意味があるとは、あまり思えない。

 以下、その根拠を書きたい。



ベストメンバー規定は必要
 単純に、「そりゃ僕でも見に行かないよ」って試合が増えるから。例えば広島だと、こういうメンバーで試合をしてもOKとなる。来季のメンバーが固まっていないので、今季のメンバーで構成する。

−−−−−−−−−−−−平繁−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−清水−−−−−−丸谷−−−−−−−−−−−−
楽山−−−−−−−−−−−−−−−−−−ハンジェ−−
−−−−−−−岡本−−−−−−横竹−−−−−−−−−−−
−−−−−盛田−−−篠原−−−−橋内−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−原−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 これだと、まんまサテライトチームとなります。ベストメンバー規定を廃止すると「アリ」になる。

 確かに、何試合に一回かはこういう布陣があっても良いかもしれない。しかし、それはサポーター・コアファンの意見。一般ファンの「佐藤寿人を見たい」「柏木陽介を見たい」って人の興味を惹くのは難しい。

 シーズンパスの購入を迷っている人は「がっかりするメンバーになるかも」と思って見送るかもしれない。たまたま見に行った試合がサブメンバー中心なら「残念だった、もう行かない」と思うかもしれない。スポンサードする企業にとっても媒体価値が下がり、よろしくないわけです。

 こういう事態を回避するため、同規定は必要です。「不必要だ」というのは「ベストメンバーで戦う必要はない」と言っているに等しい。「ファンにとっては誰もがベストメンバー」というのも、言い方はきついですが、「自分(たち)がファンを代弁している」という一種の思い上がりでしょう。



■修正の根拠1:ナビスコ杯の位置づけ
 ただ、修正は必要なのは言うまでもありません。根拠その1は、ナビスコカップの位置づけが不透明であることです。

 本来、カップ戦は多くの若手が出場するものです。例えば2009年10月29日に行われたスペイン国王杯で、バルセロナは主力を5人しか出さず、若手に多く出場機会を与えています。

 http://www.fcbarcelona.jp/news/2009_10/oct09/match_20091028.html
>この日のバルサは、いつもの顔ぶれから大きく異なった。6人の主力をバルセロナへ残し、そしてゴールマウスはホセ・マヌエル・ピントが守った。スタメンにはバルサ・アスレチックのガイ・アスリンが入り、また、右サイドバックには、本来ウイングのジェフレンが入った。

 スペイン語に堪能でないため、スペインの規約は分かりませんが、こうした起用が許される程度には寛容であるということでしょう。そして、世界的にも普通なのだと思います。

 カップ戦に厳しい規約を設け、若手の出場機会を阻むことは、日本サッカーに深刻なダメージを及ぼし得ます。すでに、「J.LEAGUE Under age players Move up Project(JUMP)」というプロジェクトが発足されており、

 http://www.j-league.or.jp/release/000/00002797.html

 その記事を報じた『サポティスタ』には、

 http://supportista.jp/2009/05/news18093008.html
・プロ契約選手数を2010年は27人、11年以降は25人に制限
・J2の外国籍選手はアジア枠を含めて2人に制限
サテライトリーグを廃止
ベストメンバー規定を廃止

ナビスコ杯を水曜開催に
・契約選手のうち、2人以上は自前のアカデミーで育成した選手を。
(13〜18歳にかけて36ヶ月以上過ごすこと/導入までは6年間の猶予期間有)

 以上のような記事があります。将来的に、ベストメンバー規定の廃止も言及されていますが、ひとまずここでは論じません。というのは、日本サッカー協会は今年から天皇杯にまでベストメンバー規定を適用したから

 http://www.nikkansports.com/soccer/news/p-sc-tp0-20090708-515578.html
 昨年は、天皇杯4回戦に登場した大分が、優勝した4日前のナビスコ杯決勝戦のメンバーから先発を10人入れ替えて、J2鳥栖と対戦し、0−2で敗退した。厳重注意だけで、ペナルティーはなかった。それも今季からは、J規約にもある「最強チームで臨むこと」を大会規定に盛り込む。今後はベストメンバーで臨まないと、ペナルティーを科されることになる。

 カップ戦は若手出場の場である、という共通認識がなされているとは思えず、今後の火種になると思います。

 とはいえ、移籍規約の改定により選手人件費が高騰し、保有選手数は規約で制限するまでもなく限られる。一方で、サテライトが廃止され、若手の出場機会確保は大きなテーマになった。リーグ戦をベストメンバーで臨むのは当然としても、カップ戦が同様の位置づけというのは色々な面で問題があるということです。



■修正の根拠2:規定に不備がある
 次に、ベストメンバー規定そのものに不備があること。

 http://www.j-league.or.jp/aboutj/2007pdf/04.pdf
>第42条〔最強のチームによる試合参加〕
>q Jクラブは,その時点における最強のチーム(ベストメンバー)をもって前条の試合に
臨まなければならない.
>w 第40条第1項第1号から第3号までの試合における先発メンバー11人は,当該試合直前のリ
>ーグ戦5試合の内,1試合以上先発メンバーとして出場した選手を6人以上含まなければなら
>ず,詳細に関しては「Jリーグ規約第42条の補足基準」によるものとする.

 広島は今季、ナビスコ杯で規定に反したとして罰金1,000万円を科されました。

 ことの是非は、サッカー蟻地獄に詳しいし、ここでは論じません。(参照:http://blog.fckbu.jp/archives/2009/06/s-best-member.html

 ここでは、規定そのものの不備を指摘したいと思います。不備とは、ナビスコ杯に規定を適用するのに、「直近の5試合」にナビスコ杯の試合が含まれないことです。ある大会の構成メンバーに対し、別の大会の基準を当てはめるのは公正とはいえないでしょう。

 ナビスコ杯が規定の対象ならば、ナビスコ杯も「直近の5試合」に含まれるべき。条文を改訂すべきなのは明らかではないかと思います。

 カップ戦を若手登用の場にすべき、というのは、上記した理由から、現場の要請として避けがたいこと。にもかかわらず、カップ戦における若手起用の幅がリーグ戦と一緒というのは、好ましくない事態ではないでしょうか。



■解決案:
 僕は、試案として次のように考えます。

■1:リーグ戦におけるベストメンバー規定は維持する

 こちらについて、大きな問題はないという認識だからです。

■2:カップ戦は「直近のカップ戦含めた5試合に出場した選手を5名以上含む」にする

 リーグ戦よりベストメンバーの幅を1人減らし、その分自由な起用を可能にするわけです。

■3:使用会場をコンパクトにする

 広島なら、ビッグアーチでなくコカコーラ・ウエストスタジアムにして、「若手の登竜門」という位置づけをハッキリさせます。「若手育成の場」として見に来るコアファンにシフトする方策です。

 確かに、これでは観客数がさらに減少する危険もあります。が、現状どおりの規約を維持したところで、増員するとも思えません。

 http://www.j-league.or.jp/data/2/?league=ync&genre=attendance&d=cup&g=nabisco_1&t=n_visitor&y=2009

 こちらを見ると、節にもよりますが、会場のキャパを満員にした試合はゼロです。決勝ですら44,308人と満員にはなっていない。

 ならば、コンパクトな会場に設定して臨場感を増し、満員のカードを多く増やすことでプレミアム感を演出するほうが良いのではないでしょうか。広島ビッグアーチにおける6,921人はキャパの6分の1程度ですが、コカコーラ・ウエストスタジアムでは6分の3です。

 現状のナビスコ杯の問題、規定の問題を一気に解決出来る方法ではないかな、と思いますが、いかがでしょうか。