ネタバレあり『キャピタリズム マネーは踊る』

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 全米1%の超富裕層が、95%の富を独占し、大多数の人間を貧困に追いやっていると「名指しで」告発するドキュメンタリー。今更ではあるけど、こんだけ名指しで著名人を告発しまくってる以上、命の危険すらあるはず。命を賭したメッセージから、何かを受け取らないはずはない。

 批評的に『インターナショナル』が流されるなど、映画は結論として「万国の労働者よ、団結せよ」と言っている。それに全面的に賛成できるかというと、微妙。米国で起こっているすさまじい格差を是正するために、労働者が団結せよというのは全くもって同意できる。できるが、共産主義を礼賛できるかというと、できない。

 「機会の平等を保て」「大きすぎる格差を是正せよ」というのが映画のメッセージだし、そこから脱線しない範囲内でマイケル・ムーアには賛成。それ以上でも以下でもない。

 金融工学を駆使し、弁護士にも手が出せないようなデリバティブという難解な金融商品(映画では、ハーバード大学学長が説明に詰まるシーンが描かれていた。僕も当然だがよく分からない)を作り上げた連中は、悪魔だと思うと同時に、ほんの少しの嫉妬やあこがれがあることを隠せない。

 知的犯罪というのは、資本主義そのものだと思う。知識と教養と能力を武器に、それらを持たない人間から、それと分からない形で奪う。だからこそ許しがたいのだが、その富を、適正な形で再分配せよと言われても、何が適正なのかよく分からなかったりする。

 自分に引き寄せて考えると、現在の自分があるのは良くも悪くも知識と教養と経験の賜物。得たものも、大きく失ったものも、自分にふさわしいと思う。同時に、現在の自分では到底満足できない。ひたすら勉強を重ねるしかないし、その結果得たものは、正当に評価してほしいと思う。こうした考えは誰もが持つと思うし、ゆえに共産主義には絶対に相容れない。

 僕はウォール街の住民にはなれないが、工場で一揆を起こす人々の仲間にも入りたくない。「中間層」になれるように努力したい。

[3本目]