【日記】適正価格がほしい

 あるライターさんの有料メルマガの購読を始めた。月800円前後で1年契約、計10000円程度。

 安いと取るか高いと見るかは内容次第、なので早速届いたメルマガを精読した。今のところ、完全に「アタリ」。自分が思っていたことを、遥かに深く幅広い知見から考察しておられる。続けて購読し、提示されたテーマをこなしていくことで、自分の知識も確実に深まると実感できた。

 とはいえ、メルマガにカネを払う行為は、かなり異色だと思う。melma!なども無料だし、そもそもメルマガ自体が流行してない。ブログもmixiも一段落、twitterに人が流れ始めているけど、総じてネットは無料だ。誰でも気軽に書け、読める。その結果、専門家が専門タームを使わずわかりやすく書いた、クオリティの高い記事も読める状況になった。つまり、クオリティの差が価格に反映されなくなった。

 しかし、対価を支払われるべきコンテンツというのは確実に存在する。何もかも0円で良い、というのは受け手のエゴで、文化を破壊する行為。適正価格は定められる必要がある、と思っている。まあ、新聞社一斉に無料閲覧記事を引き上げるとかやると、反トラスト法とかに引っかかると思うのだけど。

 僕自身もネットの無料文化に大きな恩恵を得ているし、大きな態度はできない。「しょぼいコンテンツに金を払えるか」的な言動をしたこともある。しかし、現実には「しょぼい」コンテンツは見ずにスルーし、見るのは価値を認めたものだけだ。

 それらのコンテンツには、「これならお金を払っても良いな」と思うものもある。だが現状、PCではきちんと金を支払うところまでいっていない。クレカ入力フォームを載せると、1ページごとに客は10分の1に減るという。

 そこの仕組みを突破できれば、つまりPCのマネタイズという問題がうまくいきさえすれば、専門知識を持った腕こきのライター・編集者が死なずに済み、「有益な情報を供給すれば、一定の富を得られる」という風になるよな、と思う。

 有料メルマガは、イレギュラーな方法論で、他人には真似できない。しかし、「その人固有の情報」に価値がある場合、ネット上に流失させないでマネタイズする方法はあるし、ブログなんて書かないほうが得策な場合もあるんだろうと思う。

「サイドは埋まった」(広島 移籍加入途中経過の雑感)

 現時点で確定が1名(中林と大崎はすでに今季出場しており、厳密には新戦力とカウントしない)、濃厚が2名というところ。

流経大石川大徳http://www.sanfrecce.co.jp/news/release/?n=3351

川崎F山岸智http://news.kanaloco.jp/localnews/article/0912060021/

■福岡・田中佑昌http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/140101

 すべて確定すれば、の話だけど、山岸、田中、石川、いずれも弱点だったサイドへの補強。ピンポイントに、ポリバレントな選手を獲得している。突出した能力を持つミキッチボランチリベロを同レベルでこなした中島浩司という、今季なみの途中経過だと思う。

 こなせるポジションは、石川は両サイド、山岸も両サイド/シャドー、田中は右ウイング/シャドーか。既存のサイドに質量とも不足を感じていたのは誰の目にも明らかだったが、リ・ハンジェ楽山孝志を放出したのは、戦力確保にめどがたったからと解釈できる。山岸、田中とも入団濃厚と見て良いだろう。

 以下、ポジションごとに。

■1トップ
−−−−−−−−−−佐藤寿人−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−(李忠成平繁龍一)−−−−−−−−−−−−

 寿人は絶対的な存在。それに対し平繁、李とも満足いく成果を残せていない。途中加入の李は「連携が熟成されていない」というエクスキューズがあるが、平繁には通用しない。明らかに補強ポイントといえる。

 ただ、寿人の1トップを続ける限り、「サブを受け入れる」選手しか補強できない。2トップと考えるならば、ポストプレーヤーがターゲットとなるはず。山形の長谷川悠あたりを狙ってほしい、と思っている。

■2シャドー
−−−−−−−−−−森崎浩−−−−−−−−高萩洋次郎−−−−−
−−(高柳一誠、李、耼田慎一朗、山岸、田中、大崎淳矢)−−−

 人材過多ぎみ。移籍濃厚となった柏木を外しても、これだけ候補がいる。ミキッチのシャドー起用というオプションも練習で試したことがあるはずで、これ以上補強は必要ない。

 と思っていたら、中国新聞にこんな記事がきた。

http://www.chugoku−np.co.jp/Sanfre/Sw200912110094.html
即戦力MF獲得へ 柏木移籍でクラブ方針 '09/12/11
 J1広島の織田強化部長は10日、移籍が濃厚なMF柏木陽介(21)に代わる、即戦力の攻撃的MFの獲得を目指していることを明らかにした。

 織田部長は「1人は実績のある選手を確保したい。予算の範囲でやりくりする」と話し、国内の複数の選手を候補に挙げているという。

 これまでに、来季J2に降格する大分の元日本代表MF金崎夢生(20)の獲得を申し入れたが、正式に断られた。

 また来季は、マッサージなどを担当するトレーナーを今季の5人から6人に増員。下部組織を含め、選手が体のケアをする環境を充実させる。(菊本孟)

 こちらを読む限り、チームは柏木抜きのシャドーに質的な限界を感じている、ということだろう。森崎浩や耼田の復帰では埋められない、と。断られたが、金崎夢生へのオファーはそういう文脈と解釈できる。

 シャドー/2トップの補強と考えると、国内の有力選手となると前述の山形の長谷川、古橋達弥、柏の大津祐樹、大分・家長昭博などが浮かぶ。

 しかし即戦力を求めるなら、思い切って外国人アタッカーを補強すべきではと思う。トルコ・キャンプでパルチザン・ベオグラードの10番を背負ったアルマミ・モレイラという選手は、広島をチンチンにしたそうなので、彼の情報などは集めていないだろうか、と思う。

 http://www.youtube.com/watch?v=mTJDqu98LOU

 逆に平繁、清水航平丸谷拓也あたりはレンタルでの放出が濃厚と思われる。丸谷には、ちびっ子が多い中で足元もあるポストプレーヤーとして期待しているので、どうにか頭角を現して欲しい。

■両サイド
服部公太−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ミキッチ
(山岸、石川)−−−−−−−−−−−−(山岸、田中、石川)

 一気に層が厚くなった。新加入(見込み)の山岸、石川が両サイドをこなせ、槙野智章森脇良太が代わりを務める必要がなくなる。これは、今シーズンとの大きな違いだ。

 山岸については「サイドの得点力不足」解消を狙ったものだし、田中もその文脈に近いものと思われる。山岸は服部と競争し、田中は当面サブだろうという違いはある。

 ただ、動画を見る限り田中のスピードはハンパではなく、決定力も高い。サイドの控えというより、当面は「1点が欲しいときの駒」あるいは「逃げ切り用の駒」としても使える。これほどスピードある選手が終盤に出てくると、どんなDFでもイヤなはず。

17 名前:名無しさん@恐縮です[] 投稿日:2009/12/11(金) 17:41:38 id:FxmtQXDn0
福岡・田中を知らない人のための今期のゴール動画

vsC大阪、センターラインから1人で持ち込む
http://www.youtube.com/watch?v=M8mKf_2MLOU

2列目から。絶妙のボールコントロール
http://www.youtube.com/watch?v=oOZ7pp8oGNc

裏への抜け出して1試合2ゴール
http://www.youtube.com/watch?v=yojpC5OnZ24
http://www.youtube.com/watch?v=13TxSwr2ws4

 サイドに関しては、森脇も槙野も一応はこなせる。サイドの補強はこれで打ち止めか。駒野友一の復帰はならなかったが、リーグ戦を戦い抜く上ではまずまずの陣容になったと思う。

ボランチ
−−−−−−−森崎和幸−−−−−青山敏弘−−−−−−−−−−
−−(中島、高柳、高萩、横竹翔岡本知剛)−−−−−−−−−

 序盤は森崎和、終盤は青山の離脱に苦しんだ。とりわけ、青山の穴は、柏木以外は満足に埋めきれていない。その柏木は浦和への移籍が濃厚なので、青山がフル稼働できない試合は支配力・展開力が下がることを覚悟する必要がある。

 とはいえ、ストヤノフが出場できれば中島が当面は穴を埋める。一誠も洋次郎もこなせ、横竹や岡本も伸びてきた。とりわけ、岡本が徐々に出場機会を得てきたことは好材料。本来、U−20世代でもトップレベルの素材。森崎和の後継者であり、彼が森崎和と並び立てば、青山とはまた違ったサッカーが展開できると思う。

■3バック
−−−−−−−−−槙野−−−−ストヤノフ−−−−森脇−−−−−
−−(盛田剛平、横竹)(中島、森崎和、岡本)(槙野、横竹)−−

 まずリベロ。実質、ストヤノフの代わりはいない。補強しようにも、「ストヤノフのサブ」と言う位置づけでくる実力者はいない。フル稼働できない場合は、今季同様に中島と森崎和でしのぐしかない。悩ましいところだが、代わりの利かない選手だけに仕方がない。

 両CBについては、盛田・横竹しかバックアップがいない。橋内・篠原は出場記録を見ても、とても戦力としては計算できない。最低でも1人は補強が必要だと思う。実際、動いてはいるはずだけど。

■GK
−−−−−−−中林洋次−−−−−−−−−−−
−−(下田崇佐藤昭大原裕太郎)−−−−

 中林完全移籍は、まあ既定路線なので補強というべきかは疑問。確かにうれしいけどね。

 やはり、層の厚みに疑問がある。下田は2シーズン出場がないし、佐藤昭は天皇杯で非常な不安定ぶりを見せた。原はまだ経験不足。すなわち、中林が負傷した場合は大幅に戦力がダウンする。

 ここも補強ポイント。ただ、GKは特殊なポジション(1人しか出場できない)であり、サブを受け入れる選手となると、例えば戦力外となったベテラン選手あたりだろう。退団したが、木寺浩一(現金沢)などはそうした選手だった。

 その文脈でいくと、柏を退団した南雄太は獲得候補に挙げて良いと思う。確かに足元は微妙だが、では下田や佐藤昭が万全なのかといえば、そうでもないだろう。ゴールセービングに関していえば、両者より南のほうが上だと思う。

 足元は、広島の特徴である鳥かご猛特訓で向上する。盛田や服部というO−30組も、確実に足元の技術は向上した。南が加入しても、サブで調整を続けながら伸びることは可能だろう。声を掛けてほしい。
 

■まとめ
 補強ポイントは優先順位からGK、CB、シャドー、1トップの順か。サイドは埋まったし、個人的にはシャドーも優先順位は低いが、この4ポジションが残りの補強ポイント。

 具体的な選手名を挙げると、GKに前柏の南、DFに柏の小林祐三近藤直也あたり、シャドーに新外国人、1トップに山形の長谷川、2トップ候補で山形の古橋かなと。
 
 引き続き成り行きを見守りたい。

【サッカー】W杯組み合わせ雑感(twitter記事のまとめ)

 http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/headlines/20091205-00000027-jij-spo.html
> 【ケープタウン南アフリカ)時事】ベスト4を目指す日本は、1次リーグで骨のある相手ばかりの厳しい組となった。サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の1次リーグの組み合わせが4日に決まり、日本はE組に入り、カメルーン、オランダ、デンマークの順に対戦する。

 記事の通り、非常に厳しいグループに入った、というのが率直な感想。楽観材料は乏しく、ベスト4という目標設定がいよいよ非現実的となった。彼我の戦力差を見れば、ベスト16は快挙といえる。日本サッカー史上に残る快挙で、これは日韓W杯のベスト16も、メキシコ五輪のベスト3もしのぐ。

 組み分け前、僕はこういう感想を書いた。

 http://twitter.com/DS1221/status/6341988483
>#wcdrawjp ぶっちゃけ、「南ア・スロバキアアルジェリア・日本」とかでしょっぱく突破しても、ベスト16に行けば断然盛り上がる。死の組なんてこなくていい。
>約9時間前 webで

 さらに、こうも書いた。

 http://twitter.com/DS1221/status/6342103333
>死の組に入ると、メディア的には美味しいかもだけど、恐らく開催までの盛り上がりだけ。結果を残せなかった場合のドン引きっぷりは、2006W杯後の引き潮もかくやな予感。 今回は面白さより結果がほしい。 #wcdrawjp
>約8時間前 webで

 この2つは、割と多くの人にRTされた。同じように考える人は結構いると思う。

 今回のW杯ほど「目に見える結果」が必要な大会はない。日本国民は2006年の惨敗ですっかり冷めており、相手がどうあろうと「善戦」程度では評価してくれない。

 2006年W杯は、相手が王者ブラジル、欧州屈指の強豪クロアチア、イタリアをあと一歩まで追い詰めたオーストラリアという厳しいグループだった。そして、日本は順当に勝ち点1で終わった。その結果、サッカーのパブリックな人気は大きく衰えた。4年間で多くのサッカー誌が廃刊し、スカパー加入者数は伸び悩み、日本代表戦の視聴率は低迷した。

 一方で、日本人は相手がどうあれ、勝てば盛り上がる。2002年W杯は、ベルギー、ロシア、チュニジアという非常に楽なグループだった。1998年のアルゼンチン(ベスト8)、クロアチア(3位)、ジャマイカより遥かに容易だった。しかし、日本はグループリーグ突破に沸きに沸いた。「自国開催」「相手がしょぼい」なんて見方をしたのは一部のオタクだけだった。

 つまり、ほとんどの日本人はミーハーファンなので、相手の実力を見定める目を持っていないデンマークへの過小評価も、その表れだ。2006年W杯では、オーストラリアもクロアチアも過小評価されたが、最後まで突破の可能性が残ったのは事実上日本以外の3チームだった。

 そういう事情を踏まえて、今回のグループ分けを見ると、やはり「最悪ではないが、極めて厳しい」というのが妥当なところ。

 これまでの日本の戦いを見ると、ポゼッションを握ることを前提に、90分の中でチャンスの分母を増やすという、サンフレッチェ広島Jリーグでやっているような戦略をとっているように思う。

 しかし、オランダ・カメルーンデンマークいずれも格上。日本にやすやすとポゼッションを握らせてはくれないだろう。1分で1点を取る能力を持ち、取ればさっさと引き籠る戦略と、スペースを埋めるだけで壁ができる守備力もある。スロバキアアルジェリアニュージーランドといった格下を想定できなくなった今、チームの戦略の根幹もいじるべきなのかと思う。

 しかし、そうしたマイナーチェンジが、柔軟性のない岡田監督に可能とは思えない。「結果が最も求められる大会」と定義すれば、最善策なのは岡田監督を更迭し、フース・ヒディンクに金を積んで招聘することだと思う。

 再度書くが、グループ分けは相当厳しいものになった。フェーズが変わったことを認識し、これまでの戦略の延長線上では勝てないと判断し(その材料は十分ある)、路線変更も選択肢に入れるべきだ、というのが僕の考えである。

【サッカー】広島史上、最も悲しいゴール

今のところ、そう言って良いと思う。
 
 広島ビッグアーチで、あんな光景は初めて見た。今日の最終節は、ACLへの半券をつかんだということ以上に、広島の歴史に残る試合になった。

 http://www.tbs.co.jp/supers/game/20091205_7943.html

 後半20分、槙野智章のFKのこぼれ球を佐藤寿人が押し込み、決定的な4点目を挙げた。その直後、佐藤寿人はいつものようにサポーターズシートに一目散に駆け寄ると、いつもとは全く違う行動を取った。

 黄色のキャプテンマークを外し、腕章の表をサポーター側へ。テレビカメラは、ミズノのマークしか写していない。これを裏返すと、マジックで大きく書いた「10」の文字。
 
 スカパー解説の西岡明彦氏が補足する。「前節は青山敏弘の背番号6を掲げていましたね」「意味深ですね」「柏木陽介は、自身の成長のためチームを離れる選択を残しています」。。。
 
 そして抜かれる、ほぼ泣き顔のキャプテンの姿と、少しだけ目頭をぬぐった10番・柏木陽介の顔。こんな悲しい得点シーンは、サンフレッチェ広島を15年見てきて初めて見た。

 それでも、1%程度は「何かの勘違い」という気持ちもあった。しかし試合終了後、人目をはばからず泣きじゃくる佐藤寿人、次々にチームメートに抱擁される柏木の姿を見て、それは確信へと変わった。
 
 柏木陽介は、チームを離れる決意をしている。そしてそれは、チームメート全員が承知していると。(ついでに言えば、西岡氏も恐らく情報を得ている。不自然すぎる補足コメントだからだ)

 だからこそ、佐藤寿人は泣いた。リ・ハンジェ久保竜彦、楽山考志という3選手の契約満了「だけ」ではなく、柏木陽介という、ミハイロ・ペトロビッチ監督が「広島のダイヤモンド」と称し寵愛を注いだ男がいなくなるのだから、と。

 *      *        *

 僕は、柏木を「いつかいなくなる選手」と思っていた。2年前、J2降格時には柏からのオファーに悩んだ。去年は神戸、そして浦和からの話に揺れた。いずれも、チームへの愛着との天秤で残ったとはいえ、不遜な態度が目に付く部分もあった。「骨をうずめる」とは程遠い選手という感想ではあった。

 選手は、自身の価値をプレーで証明し、金銭や名誉で対価を得る。そのことは、僕がフリーランスとして行っている商業行為と質的な違いはない。スキルを売り、対価を得る。不満があれば交渉し、是正されなければ契約を更新しない、または打ち切る。

 こうした行為は、極めて崇高な営みで、「プロならば当然」などといちいち言う必要すらない、現代社会を貫く根本思想の一つだ。これらの営みを否定するのは、犯罪的な無知と言って良い。

 だから、この惜別の気持ちは、柏木陽介という選手ではなく、「愛すべきヘナチョコ野郎」に向けられたものだ。

 この1年で驚くべき成長を遂げたが、まだまだ足りない部分も多い。ペトロビッチの下でもう1年やれば、南アは無理でもブラジルW杯では確実に主力になれる。その地盤を固めるには、あと1年は必要なのではないかと見ていた。

 しかし、22歳はサッカー選手では立派な大人だ。「翔びたい」というのなら、契約以外にそれを邪魔する権利はない。そして、その契約は来年1月末で満了する。

 機は熟した、ということだろう。翔ぶが良い。成功する権利も失敗する権利も、柏木自身にあるのだから。
 
 今言えるのはこの程度のことだけ。そして、僕は駒野移籍時にもいったが、どんな選手よりも「チーム自体」に愛着を感じている。柏木が移籍金を残さない以上、どうにかして彼と同等クラスの戦力を獲得して欲しい。トルコ・キャンプで当たった、例のベオグラードのやつなんかどうだろう、とか。そういうことを考えながら寝ることにする。

【ネタバレ】『イングロリアス・バスターズ』

 ガンガンにネタバレしていきます。読みたい人だけスクロールを。
 
 http://i-basterds.com/

 つか、映画の感想をネタバレしないで書くなんで不可能だと思うのです。エンドロールがすべて終わるまでで一作品なのであって、重要なところをボカして書いても面白くはないし、発展性のある議論にもならないと思うのです。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 







 かいつまんで言えば「WW2にかこつけて、スラッシャー映画を撮りたい」っていう、要するにいつものタランティーノ映画だと思います。

 ただ、題材がWW2ということなので、「それなりに歴史を押さえてみた」「それなりに伏線を張ってみた」「それなりに深刻な仇討ちモノに仕立て上げた」だけ。そこら辺は恐らく適当というか、タランティーノにとってはどうでもいい部分なのでしょう。

 伏線の扱いの適当さは、例えばショシャナ(メラニー・ロラン)の話に現れています。冒頭のフランス人酪農家の床下に匿われていたショシャナとその弟が、ナチスの『ユダヤ・ハンター』ハンス・ランダに見つかり、床の上から銃で滅多撃ちにされる。なぜかショシャナに銃は命中せず、ショシャナは牧場の彼方に走り去る。ランダはショシャナを認め、背後から銃を構えるも「Au revoir, Shosanna(元気でやれよ、ショシャナ)!」と叫んで見逃す。そういうシーンです。

 ところが、ここで死んだはずの弟の描写はない。仇討が主題ならば、ここでは身も凍るような惨劇が描かれていなければなりません。しかし細かい描写はないまま、弟の死体すら映さないまま暗転、次のシーンへ。最初のフランス人酪農家には意味ありげに美人三姉妹がいますが、もちろんどうでも良いので今後は出てきません。

 一時が万事そうなのであって、意味のある伏線というものはほとんどない。せいぜい、ゲッペルス主催の昼食会でショシャナを見つけたランダが、自分にエスプレッソ、ショシャナに牛乳をふるまったシーンぐらい(「酪農家のところにいたジュウだろ?」ってメッセージ)。

 それどころか、プレミア上映会のくだりで、ヒトラーがドニー・ドノウィッツともう1人のバスターズにサブマシンガンでハチの巣にされるわけです。もう、史実もくそもない。ハチの巣にされ、完全に絶命しているのにまだ撃たれ、アイスクリームのように顔が変形してるシーンまで描かれたり。


 その代わり、無駄に細かいのがスプラッター描写です。バスターズの整列シーンでレイン(ブラッド・ピット)が「ドイツ人の頭の皮を100人分剥いで来い」と言った後、いきなり次のシーンで頭をゾリゾリ剃るシーンが、無駄に鮮明なカラーで、ザクロの断面のようなやつが次々と描かれる。ご丁寧に二度も三度も。
 
 次のシーンでは、バットでナチを次々と殴り殺す『ベアー・ジョー』が登場し、ナチス将校の頭をこれでもかとぶったたいて撲殺してしまう。倒れこんだ将校の頭にバットがクリーンヒットするのが見える。さすがに引きの映像だったけれども、これも衝撃的なシーンです。R15指定なのは、割と当然だなーと。

 かと思えば、銃で足を撃たれたスパイ役ブリジット(ダイアン・クルーガー)が獣医(!)の下に運び込まれると、弾丸が入っていた足の傷めがけてブラピが指を突っ込み「なぜ失敗したのか」という尋問というか拷問をするわけです。これも詳細に描かれている。

 ブリジットはその後、ランダに絞殺されるわけですが、そのシーンでブリジットが白目をむいていく過程も無駄に細かいし、冷静なランダが髪を振り乱して顔を真っ赤にすることにも、大した意味もないのに描かれている。

 極めつけはラストのシークエンス。ヒトラーゲッペルスらを売るという条件で投降したランダを、レインが拷問するシーン。ランダの額に、ナイフでカギ十字マークを刻みつける、鮮血飛び散るシーンです。ランダの絶叫が響く中、「中尉(レイン)、最高傑作ですね」で幕。

 このオチには噴き出してしまいました。タランティーノがやりたかったのは「これ」に他ならないと思うのです。「ああ、やっぱ“それ”をやりたかったのね」と思えば、全てが許せるなとw

 ナチス高官が集まるプレミア上映会で、レインら3人のバスターズの素性を見抜いていたランダが、イタリア人と偽った3人に対して流暢なイタリア語で話しかけ、偽名を何度も何度も繰り返し発声させます。あのシーンにしたって、一度やって失敗しているのに「もう一度!」とかやるわけです。

 タランティーノの映画としては、むしろ例外的にストーリーがある方なのかな(キル・ビル程度にはある)という感想でした。申し訳程度のストーリーがあるけど、やっぱり力を入れるのはスプラッター描写だったり、股間に銃を向けるシーンだったり、店内の全員が銃撃で死ぬ中、1人生き残った男が半狂乱でマシンガンを構える顔とか。つまり「極限状態に置かれた普通の人間の狂う様」を面白おかしく描きたい、という映画なのかなと思います。

 余談ですが、映画館で見ていた際、ラテン系の外国人2人が近くに座っていたのですが、とりわけ上記の発音のシーンで爆笑が起こっていました。「アメリカ人におけるイタリア語の発音」とか、そういうネタフリなのかなと。あとは、ナチスがゴミのように殺されていくので、

 「ゴミのように殺していい人間は誰だろう。そうだ、ナチスにしよう!」
 
 とタランティーノが考えた可能性も否定できません。

 タランティーノ好きには、いずれにせよ見ておくべき映画かなと思います。お勧めです。
 
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA

『2012』を試写会で観てきた。

 http://www.sonypictures.jp/movies/2012/
 
 140文字で要約できそうなので、twitterで内容を書くのは控えました。一生分の地割れを経験できる映画でした。

 ただ、CGは史上最大の迫力といえるかもしれません。劇場でワーキャー言いながら観るパニックムービーとしては、ヘンに希望を持たせない分『トランスフォーマー2』よりも切迫感があったかなと思います。

 以下ネタバレ。白文字で書きます。

 ストーリーは、「太陽系の直列によって地軸が狂い、地球がもんすごいデカい地割れと地震津波によって徹底的に破壊されるけど愛は生き残る」という、ホラ140文字で要約できるでしょ的なもので、余韻とか感慨とかは特になく、ただ「なんかスゴい映像を観た」という感覚のみが残ります。

 こういう映画を「体験型映画」と勝手に命名してるのですが(同系統は『トランスフォーマー』『アルマゲドン』『インディペンデンス・デイ』など)、劇場の大スクリーン&音響で初めて真価が発揮される映画です。割引券を使ってみる分にはとても良いと思います。

 また、その過程で具体的に価値を生み出せない人間はガンガン死んでいきます。米国大統領すら例外ではありません。女性もガンガン死にます。プロペラ機やジャンボジェットを必死こいて操縦し、主人公たちの窮地を何度も助けた男は、ラストの方舟にたどり着いた途端あっさり用済みとなり、フェードアウトするかのように歯車に巻き込まれて死にます。

 一見「愛は永遠」がテーマに見えますが、この映画で最終的に生き残るのはほとんどが金持ちです。10億ユーロ以上を支払った者しか乗れない方舟の設定といい、裏テーマは「結局世の中カネですよ」なのかなと思って暗澹としたのは内緒です。
 
 ということで、この映画は映画館で観て、一晩寝て忘れるのがお勧めです!

 トレイラーはこちら。